浸透圧2 -高張・等張・低張
ニュー子先生!助けてください!
どうしたのじゃ?
今日腎臓(じんぞう)の尿細管(にょうさいかん)の授業があったのですが全くわかりませんでした!
高張とか低張とかよくわからなすぎて辛かったです。
ふむ。今こそやり残した講義をやる時が来たようじゃの。
やり残した講義?
そうじゃ。浸透圧の残りの講義じゃ。
はっきり言おう。腎臓の尿細管はこれから説明する内容がわからないと絶対に理解できんのじゃ。
そうなんですか!?
しかし今日の講義を聞けばお主の悩みは全て解決される! 故に心して聞くのじゃ!
よろしくお願いします!
本日のテーマ
まずは前回の講義のおさらいからじゃ。
お願いします。
浸透圧は水分の移動方法の名称と説明した。
早速だがこの図で水分は塩がある方と無い方どっちに移動したか覚えておるか?
昨日までの自分は覚えていました。
ふむ。正解は塩がある方に移動する、じゃな。
思い出しました。
よろしい。では今日の講義に入っていく。
前回の講義は浸透圧を理解してもらうために、容器における水分の移動を説明したのじゃ。
しかし、今日の講義では実際に細胞における浸透圧による水分の移動を説明していく。
容器から細胞になるんですね。
そういうことじゃ。
細胞における浸透圧を説明する上で避けて通れないのが
高張(こうちょう)、等張(とうちょう)、低張(ていちょう)じゃな。
すごく難しそうな言葉ですね。
そうじゃな。しかし話としては非常に単純での、
細胞の周りにある水分(細胞外液)の濃度が細胞の中の水分(細胞内液)に比べて濃いか薄いかというだけの話なのじゃ。
なんだかわかる気がしてきました。
そうじゃろ?
高張
最初に高張の説明からしていく。
お願いします!
まずは下の図を見るのじゃ。
この図は細胞が細胞外液の中に住んでいる図じゃ。
理解しやすくするために細胞外液をピンク色、細胞内液を緑色にしていることに注意するのじゃ。
ボクそっくりですね。
気のせいじゃ。
細胞の周りにある水分が大量の塩分などによって非常に濃くなったとする。
このまましばらく様子を見た場合、細胞の中の水分はどうなると思う?
さっきのおさらいで水分が濃い方に移動すると先生が言っていたので
細胞の中の水分が外に出ていく...とかですか?
大正解じゃ!
おお!
セルの助が言った通り、水分が細胞の外に引っ張られる形になるのじゃ。
より細かく言うと、細胞外液(さいぼうがいえき)の濃度が細胞内液(さいぼうないえき)よりも濃い場合、
細胞内液が浸透によって細胞外液へ移動することになるというわけじゃ。
先生、細胞は水が抜けても大丈夫なんですか?
良い質問じゃ。この場合、細胞内液が減ることによって細胞が縮んでしまうのじゃ。
そしてこのように細胞外液が濃い時に生じる浸透圧を高張と呼ぶのじゃ。
高張の説明でよくわからなくなりました。
そうじゃろうな。そこでイメージを掴んでもらうために言い換えるのじゃが
細胞外液の濃度が細胞内液の濃度より濃い(高い)から高張。
これならどうじゃ?
イメージしやすくなりました!
この後の解説含めて、細胞外液が濃いか薄いかで捉えると理解しやすくなるぞい。
細胞外液の方が濃いから高張。細胞内の水分が細胞外に移動する。
低張
高張が正しくイメージできたのなら残りは話が早い。
お願いします。
今度は先ほどの逆じゃ。
仮に細胞外液が大量の塩分を失って、細胞内液より濃度が薄くなったとする。
このまましばらく様子を見た場合、細胞の中の水分はどうなると思う?
今度は細胞外液の方が薄いっていうことですよね。
だとしたら細胞の中に水が入り込んでくると思います。
薄い方(細胞外液)が濃い方(細胞内液)を薄めようとしたのかな、と。
大正解じゃ!
やったー!
セルの助が言った通り、今度は先ほどの逆で細胞外液が細胞内液に流れ込んでくる。
結果として、細胞が水分で膨れ上がってしまうことも押さえておくとよい。
そして細胞外液の方が濃度が薄い(低い)ことから、この時に生じる浸透圧を低張と呼んでおる。
細胞外液の方が薄いから低張。細胞外から細胞内に水分が移動してくる。
等張
ここまで来たなら、もう等張と聞くだけでどのような意味を持つかわかるんじゃないかの?
細胞内液と細胞外液の濃さが同じ(等しい)ということですか、、、?
正解じゃ!
おぉ!
では続けて質問するが、この場合水分はどっちに移動するかの?
今度は移動しない、、、とかですか?
今日は絶好調じゃの。正解じゃ!
えへへ。
まとめると細胞外液と細胞内液の濃さが同じものを等張と呼ぶのじゃ。
濃さが同じだから当然、水分の移動も起こらないということじゃな。
細胞外液と細胞内液の濃さが等しいから等張。水分の移動なし。
補足 浸透圧の恒常性
先生、質問があります。
どうしたのじゃ?
高張も低張も、細胞が縮んだり膨らんだりしてたら細胞の体に良くないですよね?
よく気付いたの。素晴らしい成長じゃ。
えへへ。
細胞の周りが高張で過剰に水分が抜けると、この細胞の生命の危機に瀕する。
1つの細胞ならまだしも、全身の細胞でそんなことがあった日には大惨事じゃ。
ここで出てくるのがホメオスタシス(恒常性の維持)の考え方じゃ。
ホメオスタシス...(?)
はい。
主に腎臓を用いて、水分の量や濃度を一定に保つことで浸透圧を維持してくれるのじゃ。
ここで腎臓が出てくるんですね!
そうじゃ。もちろん食生活などによって一時的に浸透圧が乱れて細胞に負担がかかることはよくある。
しかし細胞が働いてくれることで最終的には浸透圧を正常な範囲に戻してくれておる。
このような働きをホメオスタシス、恒常性の維持と呼ぶということじゃな。
何かが繋がった気がします!
そうじゃろ?生理学は勉強するほど前に勉強した内容と繋がっていく科目なのじゃ。
そして知識が繋がれば繋がるほど楽しくなっていくというわけなんじゃな。
故に諦めずにコツコツと勉強を続けるがよいぞ。
はい!
それでは今日の講義は以上とする。
ありがとうございました!
最後に問題を解いておくのじゃぞ。
細胞内液が細胞外液に移動する。(細胞が縮む)
細胞外液が内液に移動する。(細胞が膨らむ)
移動しない